スーツとジャケットの仕立ての違い。
あまり考えたことがないという方が多いのではないでしょうか?
なんとなくスーツは上下同じ生地で作られていてジャケットは上下別々の生地で合わせる。とコーディネートの違いのことだと漠然と思っていませんか?
もちろんコーディネートの違いもありますが、実は仕立てが全く違い、別のアイテムだということはご存知ですか?
今回はこの仕立ての違いをわかりやすく説明したいと思います。
スーツ仕立てとは
構築的で美しいフォルムを作り出すために芯地や副資材を使用した仕立てです。
芯地が良いスーツは長く愛用しても型が崩れず美しいシルエットを保ち続けられます。
芯地の中でも身頃全てに毛芯を使用したフル毛芯は高価で手間がかかりますが、高級と言われるスーツの多くがこのフル毛芯で作られています。
目に見える表地や裏地は気にはなりますが、目に見えない芯地は人間で言えば骨のようなもので、スーツのフォルム形成においては非常に重要な素材です。
本バス芯
芯地には台芯、肩芯、胸増芯、フェルトの四層構造にになっています。台芯は全体の前身頃のシルエットを支え、肩芯は肩から胸のシルエットを補強します。胸増芯、フェルトは胸の高さを出し、立体的なバストを形成します。
この胸増芯に馬の尻尾の一本毛を使用したものを「本バス芯」といい、「ハリ」「しなやかさ」「耐久性」に優れ上質な仕立てには不可欠な最高級素材です。
ジャケット仕立てとは
スーツ仕立てとは全く異なりこの芯地や裏地を極限まで省くことでより軽く、快適な着心地にするために作られた非構築的な仕立てです。「アンコン仕立て」といいます。
ただ単純に通常の芯地の入ったジャケットから肩パッドや芯地などを省いているわけではございません。それだと着心地が落ち着かず、シルエットが決まりません。仕立ての良さを左右する芯地や副資材を使用せず綺麗に仕立てること。職人たちが課題に立ち向かい工夫を重ねた末に導き出した、より高度な技術が必要な仕立てです。
マニカカミーチャ
イタリア南部のナポリで「シャツ袖」という意味を持つジャケットの袖付け技法です。
肩パットやたれ綿を一切使用せずに、袖を取り付ける際にいせ込みを入れて取り付けます。柔らかな雰囲気になり、いせ込んだ事で出来る縦のシワから「雨降り袖」とも呼ばれています。
肩パットが無いので軽くて肩にフィットし、いせ込みで肩の可動域が増えて動きやすくリラックス感も生まれます。
カジュアルな印象でアンコン仕立てのジャケットにはぴったりの仕様です。
仕立ての違いで生地も違うの?
スーツ生地は「スーチング」といい、あらかじめスーツ用として織られた生地を使用します。芯地をふんだんに使う為、ジャケットに比べ繊細な生地が多く光沢やドレープ感の強さなどドレス要素が強いものが中心です。
芯地を使わないジャケット仕立てだと綺麗にフォルムを形成できない生地があります。
ジャケット用として織られた生地は「ジャケッティング」といい、芯地を用いない為、適度な厚みと生地に表情があるものが多く素材もウールだけではなく、リネンやコットン、シルクにカシミアと多岐に渡ります。
芯地を入れるスーツ仕立てだと厚みがある為ゴワツキやせっかくの生地の表情感が失われる為適さない生地があります。
もちろん、どちらの仕立てにも対応した生地も多数ございます。
あなたはどちらがお好みですか?
スーツ仕立ては重厚、厳格、知的、規律などクールで堅実な印象があり、
またビジネスにおいては戦闘服となり、強い力を与えてくれます。
ジャケット仕立ては自由で気軽、リラックス、軽やかなど、カジュアルな装いにも相性が良く着回しのバリエーションが豊富です。
自分のモチベーションや気分に合わせて自由に仕立てを選んで自分だけのお好みが詰まったジャケット、スーツ着ることでより充実したライフスタイルをぜひお楽しみください。